音もなく春の雨

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 終日どんよりする。冷えるわけでもなく、生温かい鉛色の雲から春の雨が音もなくぱらぱらしている。辰濃和男さんの「四国遍路」を読み終えて森まゆみさんの「一葉の四季」を読む。ぼくは樋口一葉を読んだことがない。ほとんど知らない。この本は一葉の生い立ちと東京のまちを転々としながら女三人家族で生計をやりくりし乙女椿のように散っていった短い生涯を日記などを通して活写する。一葉に和歌の手ほどきをしたという中島歌子の写真、小説家に導いたという長身で男前の半井桃水の写真も掲載しているので小説のように面白く読める。観察眼が鋭く表現力に長けた女性だったようだ。明治の東京の四季の景物を想像しながら読む。

 お昼前、歯科へ。先日削った虫歯痕の詰めもんを取りさり、型どりした銀歯を埋める。「しみることがあるかもしれませんがなれますから大丈夫です」。810円。万札を用意していたが助かった。

 お昼は、讃岐うどんを湯がく。きざみねぎ、おろし生姜、納豆、卵を水洗いした麺の上にのせ、麺つゆをぶっかけ混ぜ合わす。ノーやん風納豆ぶっかけ麺。これ、イケ麺や。夏場によくやる。トマトがあれば刻んで入れたい。

 食後、南千里の大型店へパンなど買い物。きょうは「火曜市」とかで賑わっている。店内に行列ができている。女性だけではない。男性も並んでいる。何かいなと回ってみると10コ入り卵を200名様に配っている。ためらって買い物をしているうちに行列は消えた。なにか見たくないものを見てしまった。気が沈む。わが輩の心根も大差はない。

 濁世に無縁な花たちはただひたすらに春を謳歌する。わが花壇の花たちをじっと見る(写真上)。無心に見る。癒される。千里みどりのさんぽみちに立ち並ぶ乙女椿はころんころんと道端に転がり始めた。淡い天使の遣いのような花(写真下)。その花塊の仰向けに散る姿にそっと和紙を被せてやりたい。満開の桜がちらほら散り初めた。
一葉の日記半ばの春の雨 龍尾